【私】との対話

私「だいたいね、私が『人間には実用的な“モノ”が必要で、そのアップデートも不可欠なのかもしれない』と諦めたのは最近のことなんだよ」

【私】「どゆこと?」

私「そもそも実用的な“モノ”って、最低限しかいらないと思っていた。ここに引っ越してきたときも、ガス台ひとつ持っておらず、火元は鍋用のカセットコンロだけ、というお馬鹿さんだったんだから」

【私】「この“モノ”が溢れる時代に、なにを言ってるのかさっぱりだわね」

私「でしょ。そんなに個人で意地を張らなくたって、すでに有り余る“モノ”の恩恵にあずかっていたことには変わりないのにね」

【私】「鍋用のカセットコンロみたいに、余っていたから仕方なく使った、みたいな論理が必要だったってことかな」

私「私にもその境界線は分からん(苦笑)。ちなみに諦めた原因ってのが…」

【私】「ふんふん」

私「興味をもって料理を始めたところあたりから」

【私】「『興味を持って』ってところはキーワードなのかしら」

私「そうかも。それなりにアップデートされた道具がないと、ある点以上のモノは作れないってことにあらためて気づいてから」

【私】「…遅くね?」

私「何十年もかかったよね(笑)」

【私】「その何十年間、いったい何をして暮らしてたってのよ」

私「それがね、実用的な“モノ”には価値を置かない代わりに…えげつなく価値を置いていたものがあって」

【私】「それは何?」

私「目もくらむような美しい“モノ”や心をつかむ“モノ”」

【私】「欲望の塊かwwwww」

私「そうかもしんないwwwww」

【私】「実用的な“モノ”や便利な“モノ”に価値を置かなかった分、美しい“モノ”で満たそうとしてたってこと?」

私「なのかなぁ……?」

【私】「その狙いはなんだったんだろう」

私「自分にとっての『幸せの本質』ってものを、すでに掴めてたのかもしれない」

【私】「なんやそれwwwww怪しいwwwww」

私「うん。だって今は、まったくその真逆をいってるわけだもんね。ここんとこ手に入れる“モノ”はほとんど、実用的な“モノ”や、機能をアップデートされた“モノ”だし」

【私】「昔持ちたかった“モノ”は、今は必要なくなったのかしら」

私「そういうわけじゃないと思うんだけど…」

【私】「『興味を持って』料理を始めたって言ってたよね」

私「うん。その興味を持ったキッカケも、美しい料理に魅せられて…って部分はあるかもしれない」

【私】「ただ見るだけの人から、創る側に回ったってところなのかな」

私「あー、それはあるかもね」

【私】「ただ美しいものを愛でるだけの、無能な人間だったわけだもんね」

私「…否定できんわ」

【私】「ほんとうの意味で、現実を生き始めたって感じがする」

私「最低限の“モノ”しか使わずに生きてるって思い込むことこそが、そもそもファンタジー全開だもんね」

【私】「一瞬で手に入る美しいものにも、“モノ”も“時間”も“労力”もかかっている…」

私「あらためて言われると当たり前以外のなにものでもないわ」

【私】「その当たり前ってのが、掴めるようでつかめないのかもよ」

私「あぁーーせめて20年前につかみたかった!」

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